床矯正(拡大床、拡大装置)は注意が必要です!|飯塚市の矯正歯科|はまさき矯正歯科医院

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床矯正(拡大床、拡大装置)は注意が必要です!
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床矯正とはどういうものか?

床矯正(拡大矯正・抜かない矯正)として一般的に知られているようです。
本当に床矯正装置だけで治せる症例はごくわずかです。学問的には、取り外し式のプレートで歯を動かす装置を床矯正装置と言います。ホームページ上で床矯正というと「取り外し式の装置で歯を抜かずに綺麗な歯並びになる夢の様な装置」として取り上げている場合があります。実際は、決して夢の様な装置ではありません。
混合歯列期にデコボコの改善のために床矯正装置で歯列を拡大しても、ほとんどの場合は永久歯でエッジワイズ装置を用いた仕上げの治療が必要になります。床矯正装置による拡大だけで綺麗な歯並びになった場合は、そもそも治療が必要なかったのかもしれません。不正咬合になった原因は患者さんによって異なります。顎を拡大すれば誰でも自然と歯がきれいに並ぶわけではありません。床矯正装置だけで治せることを謳っている場合には注意が必要です。

床矯正装置を用いて治療する場合は、将来の予測(いつまでどの装置を使用するのか、広げた歯列は将来にわたって安定するのか、永久歯列でのエッジワイズ装置をつかわなくてもよいのか等)をきちんと聞いてください。将来の見通しがなく使用するのは大変危険です。

子どもの矯正叢生歯列弓

永久歯萌出期(6歳時)の来院時には治療を開始せず観察を行い、永久歯完成後に治療を開始した症例

初診時6歳11ヶ月

治療開始時10歳11ヶ月

装置除去時(保定開始)13歳3ヶ月

 症状

患者さん
6歳11ヶ月男の子
主訴
下前歯がガタガタと上前歯正中離開
主な症状
叢生(ガタガタ)
治療方法
エッジワイズ装置を用いた矯正治療
所見
下の前歯(永久歯)が萌出中でありガタガタになっている。
上の前歯(永久歯)が2本生えているが、すきまがあいている。
上下の歯の咬み合わせは悪くない。
口元も出っ張ったりはしていない。
治療の費用
80万円程度
通院回数
30回
治療期間
・観察期間4年(装置はつけずに、年一回ほど来院)
・治療期間2年2ヶ月(装置を入れて歯を動かした期間)
治療内容
無駄な治療をしないために、6歳の来院時から永久歯列完成の10歳11ヶ月までは何も行いませんでした。
永久歯列完成後、上下左右の4番目の抜歯をし、エッジワイズ装置を用いてガタガタを取り除き、歯並びと咬み合わせの改善をまとめて行いました。
リスク、副作用
  • 叢生の改善のためには抜歯スペースが必要でした。
  • 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2週間で慣れることが多いです。
  • 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
  • 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
  • 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
  • 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
  • ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
  • ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
  • 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
  • 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
  • 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
  • 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
  • 矯正装置を誤飲する可能性があります。
  • 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
  • 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
  • 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
  • あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
  • 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
  • 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。

治療について

初診来院時(観察開始時・装置は入れません) 6歳11ヶ月

今の段階ではいかなる方法を用いても永久歯列完成時(12歳頃)における本格的矯正治療は避けることができないと判断しました。
よって矯正装置は何も入れずに永久歯に生えかわってしまうまで年一回程度の定期観察のみ行っています。
矯正治療のゴールは永久歯列において歯並び、咬み合わせ、および口元(鼻の下からアゴにかけての軟組織)がよいかたちになっていることです。
大切なのはこのゴールまでに行くのに無駄なことはしないということです。
例えば、今症例初診時のように下の前歯が4本生えはじめてガタガタになってきた時に「床矯正(しょうきょうせい)」と称して「床装置」を用いて歯列を広げることが流行していますが、この患者さんには適しません。
無理にこのような「床矯正」を行ったとすると、咬合が不安定になり口元も出っ張って口がよく閉じられなくなるばかりか、長期間「床装置」を使用したあげくに永久歯を抜歯しての本格的治療をせざるを得なくなってしまいます。
小さい子どもの矯正治療を行うには長期先の成長予測をすることが欠かせません。
ですので、矯正歯科選びは小さい子どもにおいてもとても大切だと思います。
永久歯列がきれいにならんできちんと咬むまでの予測・治療計画を説明してもらえるのが矯正歯科選びのポイントといえます。

これらの様な装置には注意が必要です。ごく限られた症例にしか適さないものを
「早く矯正治療を始めたら安価で簡単に治療できます。」と言って将来の予測もせずに安易に使用されている例が非常に増えています。

治療開始時

第一大臼歯までのすべての永久歯が生えましたので、ここから治療開始しています。

装置装着1ヶ月後

上下左右の4番目を抜歯して、目立たない審美ブラケットを装着して治療を開始しました。
細いワイヤーを通し、まず歯の傾きやガタガタを取っていきます。

25ヶ月後

スペースも閉じてしまい、咬み合わせをしっかりつくるために微調整をしています。
歯の位置等をよくみて、ワイヤーに曲げを加えています。
下前歯の長期の安定性のために下の前歯の隣接面のスライシングを行ってもよいかもしれません。

治療後

ガタガタは改善され患者さんの思いに合わせた歯並びと咬み合わせに仕上がっています。 口元も出っ張りすぎることはなく調和がとれています。 治療期間は2年2ヶ月でした。

治療後13ヶ月

歯並びと咬合は安定しています。